第一章 出会いの日

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 身を引いて、軽く呼吸を整え、周囲の霊気に集中する。清らかな水とそれを糧に生い茂る木々――だが、それだけではない。人間、晃自身もこの大いなる自然の一部だ。豊かなその霊気に、晃は自身の霊気を重ねる。自分が世界の一部である事を確かめ、一つになる。  籠手が深い青色に染まり、赤い刃が更に輝きを増した。晃の瞳がすっと細められる。五官を五行に変換すると木気に相当する。周囲に溢れる木気を得た事で、晃の霊気の流れを視る力は倍化していた。  再び、真義が姿を消す。晃の目は欺かれなかった。真義の目に自身の視線を合わせる。どうせ、はったりの効かない相手だ。無理に欺く必要は無い。問答無用で叩きのめす。腰を捻り、刃を叩きつけた。真義のいる位置には到底届かないと思われたが、それは霊力の風を伴って木々の合間を駆け抜けた。  木気からなる風の霊術。そして、 「燃え行け、木生火!!」  刃から生じたのは炎。風に舞った木の葉に燃え移り、風に煽られて濁流の如く、真義へと襲い掛かる。 「おん ばさら や きしゃ うん――喰らい尽くせ」  独鈷杵の刃を稲妻が走る。金剛夜叉明王の真言、その怒りに燃え上がるかのように稲妻は紅かった。焔の奔流を突き破り、晃のすぐ傍で弾けた。閃光が網膜へと焼き付き、轟音が鼓膜を破らんばかりに叩く。雷電が甲冑の上で跳ね、尾毛を駆け抜ける。  展開した甲冑は霊的な防御力も兼ね備えている。霊気の灯った指先で宙に呪紋を描き、前面に対して円状の結界を展開した。  その直後、続く一撃に晃は展開した結界ごと押し流される。
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