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「かはッ!! ゲホ……」
肺に溜まった息を吐きだし、晃は胸を抑えた。金髪の婆娑羅髪は元の茶髪へ。牙も無く、甲冑は消失していた。頭の中をガンガンと鐘を打ち鳴らすかのような痛みが走る。
――勝負あり。
負けたと存分に味わい、十秒たっぷりと大の字に寝転がる。それから、のっそりとした動きで立ち上がった。まだ、頭は痛く、全身の骨が悲鳴を上げていた。流石に今の戦いは、やり過ぎた感じがする。が、学んだ物も多かった。
「ありがとう……、ございました」と、真義に頭を下げる。
「うむ。先程の動き、中々のものであったぞ」労うように真義は頷いた。髪は黒に、肌も白に戻っていた。鬼気が再び身体に封じられる。
「今日はもう一度、戦えるといいんですけどね」
「ほう、戦いを望むかね」真義は少し驚いた顔で聞いた。当然だろう。今しがた打ちのめされたばかりだ。もう少し間を空けてからと思うのが普通の人間だ。
だが、晃は違う。何なら、これから第二ラウンドに突入したっていいと思っていた。ふと視線を感じて晃は振り向いた。小角がじっとこちらを見ている。いつから目を覚ましていたのだろう。
「ぬぅ、考えておくとしよう。それまで精進するのだぞ」真義は自分の髪を整えつつそう答えてくれた。サッと飛び上がり、大樹の葉の中へと隠れる。
「晃」
消えるタイミングを見計らったかのように、小角が呼んだ。
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