第一章 出会いの日

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「さっきの戦いの時、俺の気を逸らさせましたね?」 「私はただ、君が君らしからぬ戦い方をしていたのが気になっただけだ。気が逸れたのは、むしろ君自身に自信が無かったからではないかね?」  指摘されて晃は俯いた。分かっている。自分に力が無いばかりに、小細工を弄し過ぎた事も。それが命を懸けるような戦いであるならともかく、あれはあくまでも試練に過ぎない。晃の頭にあったのは、力をつける事以上に、早くここを出たいという願望だった。  自分らしからぬ戦い方。そこに自信が持てなかったのも事実だ。 「時に、晃よ。例の親睦会には行かなくて良いのか?」 「親睦……あぁ、同窓会ですか。主催者は式部佐保のやつだったかな、余計な事を」  最後の一言は呟くようにも呻くにも聞こえる言葉だった。もう七月になり、高校生活にも慣れてきた頃、中学時代の仲間を集めてちょっとした催しをしようという事で、開かれる事になった同窓会。晃はその主催者の名前を見た瞬間、この同窓会を開こうとした目的が見え透いたような気がした。 「一日、二日、戻っても良いのだぞ」 「それっきり戻って来なかったらどうするつもりですか」 「その時は、それまでの者だったと思う他あるまい」  穏やかに、だが容赦の無い厳しい言葉だった。当たり障りの無いというか根拠の無い楽観論を聞かされるよりかは、幾分かマシだがそれでも晃は不機嫌だった。たとえ、晃が一日二日と同窓会に出る為に帰ったとしても、戻ってくることをこの師匠は分かっている。分かった上で気を遣っているのだ。
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