第五章 天胄地府祭――魂の在り処

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「三善殿はどうされる?」 「俺か」と三善は矍鑠と笑って、右手に持った鉄球を軽く放り投げた。立ち上がった鬼の足元へと牽制の一撃を送る。 「俺はこの戦いの真っ只中にいる餓鬼んちょ共のところに行くつもりだ。橘花のやつなんか、もう真っ先に行っちまったからな。ここには十二天将の使い手が三人と、伝説の陰陽師もいる。まぁ、なんとかなるだろ」  火龍とあの扇を持った優男、それに坊主が十二天将の使い手であるのはわかる。残り一人の娘もまた、霊力だけは長倉よりも遥かに高いのが見て取れた。 ……伝説の陰陽師? 「そりゃ、儂の事かの」  その声はまるで天から降ってきたかのように、突然だった。振り向いた長倉は驚いて口を開いた。そこにいたのは藤原霧乃だった。  十二天将――勾陣を式神とする少年。それが束帯姿に烏帽子まで被って澄ました顔をしている。いや、驚くべきはそこではない。 「先日の戦いで体も熟れてきおった。どれ、少し、ここの式神どもで遊ぶとしようかの」  右手に備えた蛇腹剣――勾陣が武器と化した姿――を構え、安倍晴明は高らかに告げた。
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