71人が本棚に入れています
本棚に追加
ここに来る途中で、一真が何者かに攫われたらしいということを、義賢は教えてくれた。ただし、誰がなんの目的で攫ったのかは、義賢にもわからないらしい。
「様々な人間やらなんやらの思惑が複雑に絡み合ってるみたいね」とのことで、まるであてにならない。
「今はどうやら、助けてもらったみたいね。でも、まだ脱出できてないみたい」
「……なんで、そんなことがわかるんですか?」
「私は出来る女だから、よ」
――ウザい。
未来は相手を目の前にして、大きなため息をついた。そのくらいでは、多分意にも介さないだろう。
「ホントは、偵察用の式神を紛れ込ませてるんだぜ」と、義上が耳打ちしてくれた。
――現陰陽寮と、その「敵」ね。
以前、未来は現陰陽寮の陰陽師――曽我海馬と会ったことがある。魂呼ばいの怪異の時にだ。あの時、現陰陽寮の「敵」とは、怪異を引き起こしている者のことを指したのだろう。だけど、今は一体何と戦っているのか。
辺りを見回している限りでは、怪異が起きている様子はない。勿論、未来には霊気の流れを見る見鬼の能力を持っていないから、彼女の見えないところで何か起きているのかもしれないが。
「ま、ここでずーっと見ているのも悪くないけど、もう少し近づいてみようかしらね?」
「それを私に聞かないでください」と、未来は反抗的に返した。傍にいた笹井が気遣うように視線を向けてくる。今更だが、未来は笹井にも言った。
「あなたがこんな人とつるんでたなんて、あの時は知りませんでした」
「ははは……、悪かったよ、未来君。けど、あの時僕が命懸けで、皆と一緒にいたことは嘘じゃないよ?」
あいかわらず、不味いことになると言い訳じみた口調になる人だが、その言葉は、本人の言うとおり嘘はないのだろう。
またしても、未来はため息を吐いた。そんな未来をからかうように義賢は続けた。
「で、どうする~?」
「いきます! いけばいいんでしょ!」
最初のコメントを投稿しよう!