第五章 天胄地府祭――魂の在り処

127/135
前へ
/418ページ
次へ
 背中に何かが覆い被さる感触を受けて、一真は振り返った。八鹿が一真の背中を掴み、そのまま倒れ伏している。  反射的に抱き起こそうとしたが、背後から迫る殺意に、一真は破敵之剣を構えた。が、拳が防御の構えを無理やり弾き飛ばし、続く蹴りが一真を後ろの壁へと叩きつけた。 「義覚!」  月が霊力を纏って、護身之太刀を竜巻のように振るうが、前鬼義覚は、掌に張った障壁で受け止めた。陰陽師が防御に使う身固め、それを更に強化して盾とした霊術だ。 「霊力の消耗した貴様では話にならん。出直せ」  そのまま、後ろへと弾き飛ばし、月は後方宙返りをうって、猫のようなしなやかさで着地した。入れ替わるように、突っ込んできたのは、晃の傍にいた長身の鬼だった。  義覚は即座に反応し、「息子」が繰り出した拳を受け止めた。 「我が息子よ、我が鬼の血を分けた私の子ども。なぜ、裏切る。ようやくお前は私の力を理解したと思っておったというに」 「父よ。あなたが先に裏切ったんだろう。我々の主と、母上を!」  真義が、両手を合わせ、左右へと伸ばした。一本の無骨な剣が具現化する。それを見てとり、義覚は背負っていた斧を構えた。大の男を真っ二つに出来る程の厚い刃を備えた鬼の武器。
/418ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加