第五章 天胄地府祭――魂の在り処

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「アハハハ! どうする? ねぇ、どうする? 八つ裂きにしてあげようか、どこから食べてほしい?」  甘ったるい声で、挑発するのは夜叉姫だ。この鬼、片腕がない。片腕がない鬼と言えば、一真には心当たりがある。これは、あまり喜ばしくない心当たりだったが。 「そうだね……、まずはもう片っぽの腕も貰おうか」  その声は上から降ってきた。焔の帯を纏った乙女が、その帯の端を夜叉姫の右腕に巻きつけながら着地。立ち上がるや否や、鬼女を締め上げた。 「日向……!!」  一真が呼びかけると、日向は空いている方の左手でブイサインを作った。そんな場合じゃないだろうと普段なら突っ込んでいるところだが、今はただ彼女の登場を頼もしかった。 「伏兵か……、すっかり忘れてたけど、春日月と言えば、霊鳥の式神を飼ってることでも有名だったね」  伊織が顎に手を当てつつ、危機感の欠片もなく、そう評した。日向が何か言いたげに伊織を睨んだその瞬間、夜叉姫が焔の帯を内側から破った。  咆哮を上げ、左腕から瘴気で形成された巨大な腕を生やし、襲いかかる。 「やったなぁあああああ、このクソアマがあああああああああ!!」 「……仮にも同じ女同士でその悪口はどーなの?」  怒り狂う夜叉姫の攻撃を流れるような動きで捌きつつ、日向は呟いた。これで残った敵は四人。数では、ほぼ互角だ。あくまでも数の上では、だが。
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