終章 火潰える時

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 ふと立ち止まる沙夜の目の前に、蒼空が具現化し、膝まづいた。ずっと存在を忘れていただけに、沙夜は軽く目を瞠って、自分の式神を見つめた。 「何? 蒼空。主の命なしに、勝手に出てきて」  皮肉と睨みの利いた言葉で脅したが、蒼空にはその意味がさっぱり伝わってないらしい。 「あ、あの、これからどこへ行くおつもりかと……、あの人達……博人さん達のところへ?」 「あぁ……、うん。別に、いいわよ。どうせ、また向こうからちょっかい出してくるだろうし」  その時、自分は? 果たして、彼の思惑に乗ろうなどと思うだろうか。かつての「敵」を相手に沙夜は思案した。 「で、では、あの、晃さん達のところへ?」 「あいつ……ねぇ」  式神の言葉に、やはり沙夜はどうでも良さそうな表情で考えた。先程の戦い、蒼空は参加していない。単純に邪魔になるだけと考えての事だった。あの時、晃は沙夜を守るつもりで戦っていた。結果的に、月の式神に足止めどころか返り討ちにされていたが、戦いに敗れた沙夜を背負い、洞窟まで運んでくれた。  最初に出会った時の独白と言い、何を考えているのか一番分からないのは、「あいつ」かもしれない。あの少年は、結局何がしたかったのか? ――けど、なんでかひとつだけ分かる事がある。 「沙夜!!」  あまりにも確信があった為、最初背中に掛けられたその声は、幻聴なのではないかとすら思った。ゆっくりと体を振り返らせる。今、自分はどんな顔をしているのだろう。  晃は肩で息をしながらも、沙夜の姿を見てホッと息を吐いた。心の中が仄かに温かくなるのを、あえて無視しつつ、沙夜は冷たく訊ねた。 「なんのよう? 今更、私に何の用事があるっていうの?」
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