終章 火潰える時

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†††  その背後に追いついたのは、全てが終わった後のことだった。立ち込めていた霊術の煙が晴れるその中心へと、真っ直ぐに一真は駆け寄った。少し前までの自分とは違う。霊気の流れが、今ははっきりと見える。  晃との戦いの中でも、自分は大きく成長したが……博人から記憶を呼び覚まされてからは、別人になったかのようだ。目の前に立つ晃の霊気も、そこに鬼の気が混じり合っているのも、一目で理解できた。それがどれだけ陰陽の安定を欠いた存在なのかも。 「晃……あいつは行ったんだな?」 「あぁ。でも、お前は会わない方がよかったんじゃねーか?」  一真はぎくりと肩を震わせた。が、晃はそれに気づいていないようで、話を続ける。 「お前、あいつと因縁の仲なんだろ? 色々聞いたぜ? あいつとお前、前にも命のやり取りをしてたそうじゃないか」 「あ、あぁ……まぁ、そうだな」  歯切れの悪い言葉に、晃は片方の眉を吊り上げた。考えてみれば、あの記憶は一真の中だけのもの。博人の言葉は、聞く者に衝撃を与えるだけの強さはあったものの、晃はまだ、一真が何者なのか、どんな記憶が蘇ったのかをしらない。  詳しい事情を知らないまま、それでも味方になってくれた。それは喜ばしい事だったが、さてこれを一体どう説明すればいいのか……。そして、それは幼馴染に対しても同じだった。 「一真!! もう、なんで勝手に一人で行っちゃうの!!」 「あぁ、ごめんごめん……」と一真は自然と謝ったが、月の背後に仁王立ちするポニーテールの少女を見て、口を閉じた。 「あ、み、未来」 「何? 一真。お礼の言葉ならさっき日向ちゃんから貰ってるからいいわよ」
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