終章 火潰える時

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「どうやら、前鬼、後鬼の子ども達、大集合ってところだね……というか、義賢さん。置いてかないでくださいよ」  草を掻き分けながら、何者かが、歩み寄ってくる。その声に聞き覚えのあった一真は目を瞠った。 「あら、笹井さん。あなたは別に置いていっても死にはしないでしょ? あの時と違って」  意味深に視線を垂れ流してくる義賢に、一真は思わず声を上げた。 「な……笹井さん?」 「アハハハ……、その反応今日だけで三回目だよ。また会ったね、沖君」  笹井は以前と変わらないように見える。よれたスーツに、ぼさぼさの髪。そして、あの時には無かったモノクロの片眼鏡をしている。視線に気がついたようで、笹井はくいっと眼鏡を押し上げた。 「あ、これ? 洒落てるだろう? でも、お洒落ってわけじゃないんだ。一般人にも霊気の流れが見えるっていう特別な霊具さ」と、笹井はちょっと得意そうに言った。以前に感じた弱々しさは、今の彼には皆無とはいかないまでも、別人のようにすら見える。 「他にもありますね。護身用ですか……? それに、後ろにいるのは式神……ですか?」  一真が鋭く霊気の流れを観察すると、笹井は一瞬、本当に驚いたような顔で、ぱちぱちと目を白黒させた。すぐ後ろで何かの気配が、笹井に寄り添う。どうやら、式神のようだが、あまり強くはなさそうだ。 「僕が言えることじゃないけど、君、前と何か変わったね?」 「まぁ、ちょっと生まれ変わった気分でして……」と、一真は頬を掻きながら言った。不安げに視線を向けてくる月に、一真は安心させるように笑いかける。 「ほーう……、義賢さん、これは?」と笹井が、義賢へと投げかける。 「前世の能力が蘇ったってところかしらねぇ」  世間話のように語る義賢に、月の顔色がはっきりと変わる。 「それはどういうこと……?」 「うーん、私の口からあまり不用意なことは」と、義賢は悪戯っぽくウィンクして、渋った。 「ふざけないで」  苛々とした顔で太刀に手を掛ける月を、一真が遮る。「一真」と呟く幼馴染に、一真は真剣な面持ちで任せろといった顔をした。 「教えてくれないか。俺もさっき、叔父に記憶を叩き込まれたばかりで混乱してるんだ。正直、なにがなんだかさっぱりなんだよ」
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