act.2

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五、六時間目も特に変わったこともなく終了し、現在ヴェルサスは寮の自室にいた。 玉琳学園は山奥にあることもあって寮を有しており、数千人もの生徒全てを収容してもまだ余裕のあるほどの広さを誇っている。校舎や体育館、その他の施設の広さといい、さすがは日本で最高峰の人材を育成する学園だ。 そんな情報を頭の隅で整理しつつ、ヴェルサスは右手を空に滑らせるように動かす。数秒の後、掌の上に数冊の本が出現した。 ここに来る前、前担当者から参考にと渡されたいわゆる小説や漫画と呼ばれる物だ。 その内の一冊の表紙を見ればそこには、 ──裸で抱き合う二人の男子が描かれていた。 (渡してきた者によれば、これを読めば学園の現状が把握できるということだったが…) ヴェルサスはひとまずラフな格好に着替えると、ベッドに腰掛けそれらに目を通すことにした。一応の情報は頭の中にあるが、こうして別の形でも知ることができれば、より理解しやすいだろう。 しん、とした部屋の中にパラパラ…とパージを捲る音だけが響く。 やがて一通り読み終えたヴェルサスは、本を閉じ、小さくため息を零した。 正直、驚愕していた。 (なんだ、この書物は…?) 玉琳学園と同じような舞台設定の話だということで、今現在までの学園内での出来事と話の内容を照らし合わせながら読んでいたのだが。 「──まさか、ここまで一致しているとは」 全寮制男子校にやって来た編入生が、生徒会を初めとする人気者たちを落としていく。その順番や言動などまで、恐ろしい程の的中率だった。 違うのは、親衛隊という者たちによる制裁が編入生の身に起きていないことくらいか。 この書物は現在、人間界のとある一部の者たちの間で流行っている物らしいのだが。 「これを執筆した者は、予言の才でも持っていたのか…?」 その疑問に答える者は、ここにはいない。
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