act.2

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大理石の床の上を歩く、硬質な靴音が反響していた。 ──生徒会棟。名の如く、校舎から独立して生徒会のためだけに建てられた棟である。 学園中の生徒から人気投票で選ばれた生徒会は、特権階級中の特権階級、それこそ全てを兼ね揃えた雲の上の存在だ。 そんな彼らの執務室である生徒会室を擁するそこは、一般生徒たちが許可なしに近づくことを禁じている。同様に、寮の最上階にも、特別なカードキーなしでは立ち入ることができない役員専用の部屋が存在する。 それはまさに、自分たちが選ばれた特別な人間であるという、彼ら生徒会役員の虚栄心をいたく満足させるものであった。 豪奢な建物の造りに見合う、これまたきらびやかな扉を開けば、ホテルのスイートルームもかくやと言わんばかりの内装の生徒会室が眼前に現れる。 そこにあった、かつて役員たちが仕事をしたまに休息をとっていた厳かで上品な空間は、今はもうない。 「あーっ夜斗!遅いぞ、何やってたんだよっ!」 役員ではないにも関わらずまるでこの生徒会室の主であるかのように振る舞う男子生徒は、ローテーブルを囲うように据えられたソファの上でそう大声を張り上げた。 「悪いな、書類出しに行ってたんだよ」 「なんだよそれっ!夜斗は俺より大事な用があるって言うのか!?」 夜斗の答えが気に食わなかったのか喚きながらも、両手に持った菓子は手放さない。 「篝のことは放っといていいんですよ。それより愛美、こちらのチョコレートもいかがですか?」 副会長がそう言い、愛美の頬の食べかすを拭ってやったりと甲斐甲斐しく世話をする。 「そうそう。かいちょーはおれらと違って忙しいんだって?」 「……愛美のこと、一番考えてるの、俺」 「「何言ってんの!僕たちに決まってんじゃん」」 それに会計たちが続き、室内はまたがやがやと騒がしくなった。
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