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食堂の扉が開かれた次の瞬間、悲鳴と喧噪が襲いかかった。
予想していたこととはいえ、この騒音の中を平然と進んでいける役員たちは、やはり慣れというものだろうか。
しかしそのざわめきも、集団の最後にヴェルサスが姿を現した途端、しんと静まり返った。誰もが呆然と自分たちを見つめているのが分かる。
ヴェルサスはさりげなく周囲の反応を窺う。
嫌悪、ではない。憎悪でもない。だが決して好意的ではない、どこか困惑したような、強張った雰囲気が生徒たちの間を漂っていた。
(──亀裂(・・)が入ったな)
確認し、ヴェルサスは自らもまた二階の特別席へと歩を進めた。
自分が編入生と行動を共にしたことでもたらされたその結果を、より強固にするために。
打って変わった静寂の中、交わされる役員たちと編入生の楽しげな笑い声だけが、場違いに響き渡っていた。
「あーやっぱここのオムライスすっげーうめぇ!」
「ふふ、愛美は本当にオムライスが好きですね」
「俺の一番の大好物だからな!」
「オムライスが好きって」
「愛美ってば」
「「可愛いー!」」
「か、可愛いって、俺は男だぞ!」
「え~愛美はかわいいよねぇ」
「……ん。可愛い」
「黄太と幹夫までっ!だから俺は可愛くねぇってば!」
食事中ということを少しも考慮しない大音量の会話が垂れ流される。
ここに来る前も、来てからも、愛美が何かをする度「可愛い」「可愛くない」というやり取りが散々繰り返されていたが、彼らは飽きるということを知らないようだ。
誰が愛美の隣に座るかで一悶着があったりしたが、ひとまず食事が始まった。
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