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──そこは混沌と暗黒の地。この世のどこでもあり、またどこでもない。闇から生まれしものたちが蠢く場所──
「…ん、」
その時、ひとつの影が闇の中でゆっくりと起き上がった。
「招集…か」
周囲に微かに視線をやり、ぽつりと呟く。そして、おもむろにその場から姿を消した。
辺りより一段と闇が深い場所に、立つものがいた。全身に纏った漆黒のローブらしきもののせいで背景と同化しているが、時々身動きすることで辛うじてそれが闇と同じものではないことが分かる。
その足下には地面から湧き出してきたかのような水鏡があり、様々な景色が次から次へと移されては消えていくようだ。
そこに、突如新たな影が出現した。
「…呼んだか」
向かい合う二つの人影はよく似ていた。まるで、周囲の闇が意思を持ち形作られたかのように。
「お前には第三世界に行ってもらう」
「…第三世界に?」
「〈禍〉の出現が予測される」
「!」
あとから来た方の影が、微かに息を呑んだ。
「最終目標は〈禍〉の消滅。それに際しての二次被害の食い止めも可能な範囲で行え」
「……了解した」
そこもまた、それまでの淀む暗闇から浮かび上がった場所だった。
やはり脇には人影がひとつ存在しており、奥はどろりとした闇が渦巻いているのが見える。
「ここから先は立ち入り禁止だ。用件は?」
「第三世界指定の急務を請け負った」
「…確認した。進入を許可する」
影の傍を通り抜け、渦の前に立つ。
「第三世界、座標:0012-5583」
そのまま腕を持ち上げれば、触れたところからずぶりと渦に沈みこみ、あっという間に全身は暗闇へと飲み込まれていった。
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