act.3

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食事をしていようが、役員たちが愛美を構い倒す風景は変わらない。移動中でも所構わず愛美の取り合いをしていたので、もう今更という感じだが。 こうして食事を共にしてみると、さすがは良家の子息といった感じの役員や他の一般生徒の中で、食べ散らかす愛美の姿は妙に浮いていた。 彼も理事長の甥ということは一応上流階級の一員であるはずなのに、行儀作法の類いは習わなかったのだろうか。 ちなみにこれは理事長以外は知らないことだが、全担当者のデータによると、伍条愛美は前の学校で問題を起こして退学になった後、この学園に裏口入学を果たしたらしい。 学力が伴わず、授業もほぼ欠席しているにも関わらずⅠ- Sに在籍しているのは、理事長の甥である恩恵なのだろう。 ──それはともかく。 ちょうどいい機会だから、生徒会の役員について考察してみたい。天使の候補を絞り込む上で、彼らの情報の吟味は欠かせないのだ。 まず愛美の左隣でニヤニヤ笑っている会計、若松黄太。 幸いなことに。彼だけは絶対に天使ではないということが分かっている。 天使というものは筋金入りの潔癖である。その上基本的に、自分たち天使と自身が守護している人間以外を見下している。 故に、複数の人間と肉体関係を持っている若松は、天使ではありえないのだ。 さて、若松の隣が庶務の谷口空・海だ。 雰囲気はぴったりだが、彼らもまた天使である可能性は低い。 双子の天使は原初のそれを除いては生まれていないはずだからだ。絶対ではないが、まず天使でないとみていい。 食卓中で一番静かな書記、豪徳寺幹夫。 彼の場合はやや判別が難しい。 二メートル近い巨体と黒髪黒目。彼のような姿の天使がいないとは言わないが、少数派である。 姿を変えているにしても、そのような力を使っていれば分かるはずなので、それもない。念のため保留というところだろう。
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