act.3

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次に、席取りが始まった瞬間有無を言わさず愛美の右隣に陣取った、副会長白永漣。 実のところ──天使である可能性が一番高いのは彼だ。 理由のひとつが、金髪碧眼というその姿である。全校生徒の中で最も華やかできらきらしい、まさに天使そのものの容貌なのだ。 何よりも、愛美に対する態度。彼は誰よりも愛美に執着しているように見える。やや好奇心混じりの庶務などに比べ、その度合いが桁違いなのだ。 まだ全校生徒を調査したわけではない以上完全にそうだとは断言できないが、現在の時点で最も要注意な人物だ。 ──そして。何故か自分の隣に座っている、この学園の頂点である生徒会長、篝夜斗。 必死に愛美の興味を引こうとしている役員の中で一人余裕そうに眺めながら食後のコーヒーを啜っており、騒いでいる役員たちをにやにや眺めながら、時折愛美にちょっかいをかけて反応を楽しんでいる。 その容姿は特上で、その点で言うなら彼以上に天使に相応しい者は他にいまい。 だがどこか禍々しいその気配。 それもそのはずだ。何故なら彼は── 「おいヴェルサスっ!お前何も食べないのか!?」 突然愛美が叫んだせいで、思考が途切れてしまった。 「…空腹じゃない」 死神は食事をしない。食べられないわけではないが、人間のように栄養摂取を必要としないのだ。 「そんなんじゃだめなんだぞ!ほらっ俺が食べさせてやるよ!」 「いや、いらな──」 「遠慮するなって!」 「愛ちゃん、そんな奴にあーんなんてしないでよぉ~」 「「僕たちと食べさせあいっこしよ!」」 「私が愛美に食べさせてあげますよ」 「……あーんしたい」 どう断ろうか思案していると、ありがたいことに役員たちが割り込んできた。 すると愛美はヴェルサスのことをころっと忘れ、いつの間にやら役員と愛美の食べさせあいが始まる。
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