act.1

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一通り確認し終えてから、今度はこの辺りの区域の前担当者から受け継いだ知識を中心に見ていく。簡単にまとめると、 ・玉琳学園は外界から隔離された全寮制男子校である ・学園特有のルールのようなものが存在する このようになるだろうか。転校生ということである程度なら誤魔化せるが、やはりこの学園にある特殊な慣習には注意が必要だ。学園内でしか通用しない常識は、既存の知識では対応できないだろうから。 情報を確認するのと同時に、今回に任務についても思考する。 〈禍〉の消滅──。 イレギュラーで大量の人死にが出ると、死神界が死魂で溢れてしまう。これが〈禍〉である。 大抵の原因は、〈天使憑き〉と呼ばれる一人の人間が関係している。 ──では〈天使憑き〉とは何か。 〈天使憑き〉は、天使の祝福を受けた人間のことだ。彼らは天使の守護を得、全ての人間から愛されるようになる。 天使たちは自分が愛した人間を守護しようと常に傍らにいるので、天使に祝福された人間をこのように呼ぶのだ。 逆に悪魔と契約した人間を〈悪魔憑き〉と呼ぶが、今は関係ないため置いておく。 この天使と〈天使憑き〉を見つけなければならないわけだが、普通なら見分ける方法は簡単だ。彼らは総じて容姿が飛び抜けて良い。 天使は人間の姿になって対象の人間の傍にいるので、ようは美形の二人組を探せばいいのだ。 しかし──ヴェルサスは周囲を見渡し、小さくため息をついた。 (多すぎる…) 困ったことに、この学園には容姿のいい人間が大勢いるのだ。これでは候補を絞れない。 これも玉琳学園の特性だということは承知していたが、まさかここまでとは思っていなかった。 (どうするか…) 再び思考の渦に呑まれそうになった、その時。 ──ざわりと、大きく食堂中が揺れた。
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