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「……」
「……」
狭い給湯室には、蛇口から勢いよく出る水の音だけが響いていた。
……気まずい。
何か話さなきゃ。
そうは思いつつ何を話せばいいか分からなくて、何も言わないまま二人並んでただ黙々と作業を続ける。
でも、話すなら、今しかないよね。
あたしは思い切って口を開いた。
「あのさ、こないだの事……」
増井くんはちょっとだけ考え込むようにして、それから思い出したように言う。
「ああ」
「ごめんね、あんな事……」
そう言うと増井くんは目を見開いて、表情を隠すようにぱっと顔を伏せた。
「別に、気にしないけど」
「あんな事しといてあれだけど、あたし、よく分からないんだ。どうしてあんな事したのか……」
「……」
「多分、酔ってたの。だから、忘れて」
増井くんは困ったような顔をして、何か言いたげにあたしを見た。
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