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「ギャーギャーうるさい女は嫌い」
その一言で、周りの空気が固まった。
あの日から、あたしは彼が嫌いだ。
――「だからー、その増井っていう人がですね?話しかけてもニコリともしないんですよ。こっちは部署に二人しかいない同期だからと思って、仲良くしようとしてたんですけどねー」
「環奈ちゃん、それ、さっきも聞いたよ……」
あたしの向かいに座って愚痴を聞いてくれているのは、会社の先輩の神崎祥子さん。
部署は違うけど同じ高校出身のよしみで、あたしの事を気にかけてくれて、こうしてたまにお家へ呼んでくれたりする。
祥子さんはすごくサバサバしていて、たまに毒舌だけど、相談事がある時は本当に親身になって聞いてくれる人だ。
そんな祥子さんを、あたしはすごく尊敬していて、いつも頼りにしている。
「えー、だって、本当ムカつくんですよ、あいつ」
「とか言って、さっきからその増井って人の話しかしてないよ?あ、お茶のおかわりいる?」
「あ、飲みたいです」
「ちょっと待ってて」
祥子さんはにっこり笑ってティーカップを二つ手に取ると、席を立って台所へと向かった。
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