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実を言うとあたしは、祥子さんに憧れてデザインの道を志した。
2歳年上の祥子さんは、あたしが夢愛高校に入学した時ちょうど3年生。
あの頃から祥子さんには、他の人とは違うオーラみたいなものがあった。
皆同じ制服を着ていても、祥子さんだけはどこにいてもすぐに分かったくらい。
まさにカリスマって言葉がぴったりって感じだった。
だからあたしたち下級生はみんな祥子さんに憧れて、制服の着こなしなんか祥子さんの真似をこぞってしていた。
けれどもどんなにそっくりに真似しても、どうしても祥子さんみたいに素敵にはなれなかった。
祥子さんみたいになりたくて、あたしは高校を卒業後、服飾系の専門学校へと進んだ。
専門学校での勉強は、大変な事もあったけど、やりたい事ができて楽しかった。
あたしには、ずば抜けた才能はない。
それでも一日経つごとにちょっとずつでも腕が上がっていくのが分かったし、努力次第でトップにも立てるって、入学当初は本気で思ってた。
でもそれは甘い考えだった。
いざ就職となるとデザイナーの仕事なんてほとんど無くて、あっても祥子さんみたいに学生時代から目立った活動をしていたり、賞を取ったりする人でもう席は埋まってしまっていた。
それでもデザインに関わっていたくて、必死の思いで何とか手に入れたのが、デザイン会社の事務方の仕事。
偶然にもその会社で働いていたのが、祥子さんだったという訳だ。
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