素直じゃないね

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 ガチャッ。  ドアが開く音がして、あたしは振り返った。 「あ、環奈ちゃんか、こんにちは」 「佳祐さん!お邪魔してます!」  部屋の奥から顔を出したのは、祥子さんの旦那さんの佳祐さんだった。  祥子さんといる時はすごく柔らかい印象の人なんだけど、ああ見えて一部上場企業で出世コースまっしぐらのエリートらしい。  人は見かけによらないもんだな、と佳祐さんを見ながらあたしはしみじみ思ったり。  まじまじと見つめるあたしを佳祐さんは不思議そうな顔で見る。 「佳祐、出掛けるんじゃなかったの?」  その時祥子さんが紅茶を淹れて戻って来た。 「うん、もう少ししたらね」  祥子さんを見て佳祐さんは、ますます柔らかい顔で微笑む。  やっぱり、好きな人と一緒にいるからなのかな。  あの柔らかい感じは。  二人の仲の羨ましさに、あたしはちょっと意地悪な冗談を言う。 「すみません、祥子さん取っちゃって」  佳祐さんは笑った。 「いいよ、後で思いっ切り一人占めするから。ね、祥子」  佳祐さんは茶目っ気たっぷりの顔をして祥子さんの方を見る。  あたしの前に置かれるはずだったティーカップがテーブルとぶつかって、ガションと大きな音を立てた。
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