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「あ、ごめ……」
「大丈夫ですか、祥子さん!?」
「う、うん、ちょっと手が滑っただけだから」
その様子を見て可笑しそうにププッと笑いながら佳祐さんは部屋を出て行った。
「もう、本当、何言ってるのかしらね。人前であんな事言うの、やめてほしいわ」
祥子さんはもう一度あたしの向かいの椅子に座りなおしたけど、口調とは裏腹に顔は何となく赤くなっているように見えた。
「祥子さんって、もしかしてツンデ……」
言い終わらない内に祥子さんの目がぎらりとこちらに向いた。
それは多分、触れてほしくない祥子さんの、照れ隠しの合図。
「すみませーん」
「環奈ちゃん、私は別に気にしないんだけど、一応目上の人への言葉遣いには気をつけなさいよ」
あたしはわざとふてくされた顔をして答える。
「はーい」
あたしのこういう子供っぽい所を許してくれる大人な祥子さん。
でも、そんな大人の雰囲気とは真逆の、素直じゃない所もある。
そんな祥子さんが、あたしは大好きなんだけど。
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