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「ねえねえ、増井くんさ、もう仕事覚えた?あたし全然覚えられなくてさあ」
帰り道、あたしは一人とりとめなく話し続けていた。
「本当覚える事多くて大変だよね。すごい不安になっちゃう」
「それは、勉強不足なんじゃないの?休みの日とか、覚えた事ちゃんと復習したり確認したりしてる?」
「うぅ……」
だって、なかなか会話が続かないし、続いたとしてもこのざまだし。
「増井くんって、真面目なんだね」
「そのくらい当たり前でしょ」
「……」
言う事いちいちムカつくし、でもそれでいて的を得てるからあたしは何も言い返せない。
あたしの事、出来ない奴だって思ってるんだろうな。
それも事実だけど……。
ここまではっきり言う必要ないじゃない。
まったく、なんでこんな事に。
これなら、一人の方がマシだった。
「……えーと、増井くん、一人暮らし初めて?」
「いや」
「そうなんだ。あたしは初めてでさ。帰ると一人って結構寂しくない?」
「俺はそうでもないかな」
「へえー、そうなんだ」
「……」
この人、あたしと話したくないのかな?
なんかもう、嫌。
早く帰りたい。
とか思っていたその時だった。
ドンッ。
「きゃっ!」
突然背中に衝撃があり、視界がぐるんと大きく動いた。
「危なっ……!」
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