第1話 ~紗綾~

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あたしは、敬ちゃんが叫んだ相手に驚いて声も出なかった。 「紗綾!」 真っ直ぐに駆け寄ってくる綾斗先生。 息を切らせていて、いつも整えていた服の襟元は乱れていた。 髪はいつにも増してボサボサになって、額から薄く汗が浮き出ている。 「さっきはごめんっ」 あたしの側に屈んで、左手を握りながら見上げて言った。 「言い訳聞いて欲しいから、一緒に帰りましょ……?」 「やっぱり、てめー紗綾になんかしやがったのか!  ぐあっ!!」 真っ直ぐに見つめる綾斗先生に、あたしは静かに頷いた。
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