~更科とりかへばや物語~

10/30
前へ
/107ページ
次へ
一瞬にして教室内がざわつく。 (やっべ~つか、痛ぇし...) 机におでこをぶつけた俺は、恥ずかしさのあまり顔を上げられないでいた。 「さ、更科君...大丈夫?」 隣の奴が恐る恐る声を掛ける。 (やめてくれ...頼むからそっとしといてくれ...) 「具合でも悪いのか?」 前の奴まで... 「先生、葉月朝から調子悪いって言ってたので、僕保健室連れて行きます!!」 この声は遼か!?ナイスアシスト!! 自席を立って俺の席にパタパタと足音が近づいてくる。 「葉月っ、立てる?保健室行って休もう?」 遼...なんてイイ奴!! 「あ...うん、ちょっと目眩がするけど、大丈夫ありがとう...」 えーっと、葉月っぽく葉月っぽく... 「すみません、先生。大丈夫なんで授業続けて下さい。」 そう言って俺と遼は教室を後にした。 「遼ナイス!!マジ、サンキュな!!」 ニカッと笑うと遼は呆れた顔で呟く。 「やっぱり柚樹なんだね...」 「あ、バレた?」 「黙ってたら多分わからなかったけどね。葉月授業中寝たりしないし、きょんのこと"きょんいち"なんて呼ばないしね。」 「んだよ~つまんねぇ!行けると思ったんだけどな~」 「いや、多分普通にみんな葉月だと思ってるから大丈夫でしょ?でも、なんだろ。微妙にやっぱ違うよね。」 「そっか~...」 昔から二人一組みたいな扱いをされることが多いけど、俺は俺、葉月は葉月という扱いに、嬉しくなった。 「遼やっぱ、イイ奴だな~!!」 ガバッと抱きつく。 「え、あ?ちょっと!!も~っ!!」 そう言って背中をポンポンする遼であった。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

320人が本棚に入れています
本棚に追加