第1話 敗北感

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???「おい、まな~!」 いつもの声、いつものトーン、いつもの朝。 今までと変わらないあたしたちの関係で、高校2年生としての新学期が始まる。 茉夏「はよ~、いっき」 赤ちゃんの頃からずっと一緒で、お昼寝やごっこ遊び、お風呂…いろんな時間を過ごしてきた幼馴染の樹。 そんな樹を、あたしは“いっき”と呼び、樹はあたしのことを“まな”と呼ぶ。 樹「ホラ、忘れ物!」 その忘れ物は大事なあたしのお弁当なのに、いっきは何も考えず、ひょいと投げてきた。 茉夏「ちょっと~!バカいっき!」 ヘヘッといたずらっぽく笑って、走って先に行ってしまう。 (…“好き”かもな。) 心の中で、呟きながらいっきの後を追おうとしたとき、 ???「茉夏~!!!」 大声で、あたしの名前を叫んだ人。 思わず、いっきも振り返る。 多部 紗倉(たべ さくら)。 高校で知り合った、親友。1年は同クラだったけど、新2年で離れた。 いつも元気が取り柄の明るい子。 紗倉「おは~、樹!茉夏!」 樹「うっせ~よ、朝から…」 本当に迷惑そうにしている、いっき。 そんな姿をまったく気にしない紗倉は、元気よく走ってくる。 あたしは、知ってる。 紗倉は、樹が好きだってこと。
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