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私は酷く苛立っていた。
他の何にでもなく、ベッドの脚に手首を縛りつけられている茶に近い黒髪の少年に、だ。
「……プロジア。私達、踊らされていないよね?」
薄紫色の長髪を整えていたプロジアは、小さく笑って誤魔化す。
「ふふ。確かに少々……いえ、かなり手際よく終われましたものね」
瞳を隠している黒い包帯の位置を少し直してから、彼女は一歩だけ“彼”に近づく。
当の彼は、猿轡【さるぐつわ】を噛ませているのでただ唸っているだけだ。
「初めまして、ですね。私はプロジアと言います。よろしくお願いしますね、隼垣涼一郎さん」
少年――隼垣はこちらを警戒しっぱなしだ。眼で分かる。
正しい行動だ。ここで心を許せる奴は異常者か何かだと思う。
「……やっぱり本物の『世界最強の能力者』、なんだね」
出来れば、ただの学生を拉致した……で終わらせたかったのに。
なら、何でこんなに――。
「ねぇプロジア。隼垣涼一郎の護衛の情報は間違いないんだよね?」
頭に叩き込んでいた情報を鵜呑みにするなら、もう少し手こずるはずだった。
だけど蓋を開けてみたらコレだ。
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