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「それは――」
「はい、隼垣さんの思っていることで正解だと思いますよ?」
割り込むようにプロジアが発言。……癪だが、こういう言い合いは彼女の方が圧倒的に強い。
だから、私は黙って聞いていることにする。
「もし命が目的ならば私たちは貴方を“気絶”ではなく、とっくに“殺害”していますしね」
そう、まさにその通り。
今回の任務が“殺害”だったなら、とっくに終わっている。
それでも今こうして、五体満足で隼垣がいる理由……。
「単刀直入に言いましょう。隼垣涼一郎さん。私たちと一緒に来る気はありませんか?」
『世界最強の能力者』を私達『ブラックホークス』の戦力として取り込むこと。これ一点のみ。
言い換えるならばそれは、私たちの雇い主である『レオパルド社』が世界の頂点に君臨することを意味する訳で。
「無い」
真っ直ぐな眼だった。
私やプロジアなんかよりも、真っ直ぐで綺麗な眼。
「ディー? どこに行くのですか?」
「ちょっと出てくる。長期戦になるでしょ? 食料を調達してくる」
「領収書は忘れないでくださいね」
直視できなくて、逃げるように私は隼垣のいる病室を抜け出し、そのまま廃病院の敷地から出た。
(……良い風だな)
憎たらしいことに、今日は快晴だった。
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