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神社の参道にひらひらと舞う緑葉の中を
一人袴(はかま)を着た青年、西条 翔風(さいじょう なびき)が愛用している竹刀とともに歩いていた足を止め、空を見上げる。
その眼には何も映さず、ただ風の音を聞く。その姿は、儚く切なさが漂っていた。
「おっ翔風君、毎日お参りありがとうねぇ~♪」
箒で葉を集めるおじさんが翔風の頭を優しく撫でる。
「…うん。ここ……気持ち…から」
人と話すことが苦手な僕を嫌がる様子もなく優しい手で撫でてくれるんだ…
皆は、嫌がる…僕を否定する…
けどここだけは…おじさんだけはいつも優しく頭を撫ででくれるんだ…
「そうかいそうかい♪そう言ってもらえて嬉しいよ」
「…も…帰ら…いと。ばい…ばい」
竹刀と一緒に入れていた白杖(はくじょう)を手に取り、再び足を動かす。風になびきハニーブラウンの腰まである長い髪は、陽の光で輝き、スカイブルーの美しい瞳は何も映さずとも光り輝き、誰もが魅了されただろう。
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