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何に謝っているのか。何で謝っているのか分からない。そこにはごめんなさいの一言があるだけ。同じクラスの奴だろうから聞けばいいだけの事だけど、そんな事をすれば彼も虐めの対象になるかも知れない。それだけは避けたい。こんな惨めな思いをするのは僕一人で十分。苦しみは分かち合ってはいけない。苦痛は一人で背負い込むべきなんだ。
僕は封筒を破り捨て宛名を誰か分からなくした後、そっと懐に手紙をしまった。
暖かい。初めて感じたこの気持ちは何だろうか?
その時に感じた気持ちは今になっても分からない。けれど、あの手紙に助けられたのは事実。あれが無ければ今の自分はもうとっくの昔に死んでいた筈だ。
あの手紙の送り主の名前と目の前の彼の名前が一致した時、もしやと感じていた。あの時、僕を助けてくれた彼はこの男なんだと。そう思えれば感謝の言葉が浮かんでくる。でも、その一言が出る事は無く、僕はそっと歩み始めた。
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