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あたしはよろめくような形で、後方へ一歩後退する。
さっき息が止まっていた反動からか、
今はバクンバクンとうるさく鳴る心臓。
誰の婚約者ですか? なんて、聞く必要などない。
この部屋にいたんだ。
そんなの、わかりきっているじゃないか。
「そうそう、
圭介さんから“屋上に来て下さい”と言伝を預かっています」
あたしは頭が真っ白になりながらも、
なめまわすように彼女を上から下までくまなく見た。
ひどく不躾(ブシツケ)な行為だと思う。
でも、そうせずにはいられない。
「すぐに行ってあげて下さい。用件はそれだけです」
“婚約者”である彼女が淡々とあたしに言い放つ。
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