序章

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 ところで常紋トンネルに、タコ部屋労働者の「人柱」が立っているという話は、工事終了直後から既に地元では噂されていたようだ。しかしながら、あたかもそれを裏付けるような発見も昭和45年にされている。崩れかけたトンネルの壁から頭蓋骨が、保線区の職員によって発見されているのである。だが、それ以上の人柱らしきものの発見の証言は、得られていないので、人柱として埋められたものかどうかについては、議論の余地があるだろう。いずれにしても、昔からの多数の人骨の発見が、如何に犠牲者を多く出したかを物語っていることには、疑問を挟む余地はないはずだ。  北海道の鉄道や道路建設には、多数の囚人やタコ部屋労働者が関わっていることは紛れもない事実で、犠牲者も数多くでた。常紋トンネルのほかにも、旧根北線の越川橋梁など「人柱伝説」がささやかれている場所は、数え切れないほどである。そして、行政、特に警察も、そういう非人道的、あるいは属法行為を事実上「見逃してきた」という(賄賂等で、より積極的に業者側につくような警官もいたらしい)「現実」に対して目を背けることはできないだろう。  北海道の開拓史には多くの「裏」の側面があることは否定しようがないのだ。しかし残念ながら多数の犠牲を払ってできた鉄路が廃止され、「地域」が過疎化、高齢化するに至り、そういう事実は闇に葬られつつある。そして今現在、我々は、それを指を咥えて見ていることしかできないのが、実際のところであろう。 ※※※※※
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