第一章

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「お待たせしましたー、待った?」 手を振り、笑顔で駆け寄りながら美加は男に言った。 「いや、そんな待ってないよ」 男もまた笑顔で答える。 何の違和感もない、何処にでもある待ち合わせの光景だ。 けれど、美加はこの男の事を知らない。 正確に言うと覚えてないのだ。 名前もどんなキャラクターかも趣味も分からない。 「どこに行こうか?昼時だし、とりあえず飯行く?」 「うんっ、そうしよう」 そう言って二人で並木道の大通りを歩き出した。 彼と出会ったのは十五年位前だ。 今の美加は、それから同じ位の年月を生きてきたことになる。 二人とも今年で三十一になる。 中学で二年間同じクラスだったらしい、けれど全く覚えていない。 一年の時は隣のクラスで二、三年が同じクラスだったらしい。
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