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「お待たせしましたー、待った?」
手を振り、笑顔で駆け寄りながら美加は男に言った。
「いや、そんな待ってないよ」
男もまた笑顔で答える。
何の違和感もない、何処にでもある待ち合わせの光景だ。
けれど、美加はこの男の事を知らない。
正確に言うと覚えてないのだ。
名前もどんなキャラクターかも趣味も分からない。
「どこに行こうか?昼時だし、とりあえず飯行く?」
「うんっ、そうしよう」
そう言って二人で並木道の大通りを歩き出した。
彼と出会ったのは十五年位前だ。
今の美加は、それから同じ位の年月を生きてきたことになる。
二人とも今年で三十一になる。
中学で二年間同じクラスだったらしい、けれど全く覚えていない。
一年の時は隣のクラスで二、三年が同じクラスだったらしい。
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