起・源

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零和さんは終戦直後の皆が貧しいときに、わざわざ車でオイラ達を海に連れて来てくれた。 優しい……。 優しさっていうのは心だよなぁ。 でも、物理的に納得いかない自分も存在する。 うーん、ロボットも、爺ちゃんって呼んだ栄治さんも未来人かなぁ? オイラは父ちゃんの趣味で収集している書籍で読んだ事を思い出した。 「栄治さん、物質に心ってさ……物質の最小単位は、原子・元素だよね?」 「正確に言うとアップクゥオークとダウンクゥオークだけど、会話の本質は同じだから原子でいいよ」 「クゥオーク……ふーん」 「源さん、気にせず続けて」 「オイラの調べで、原子は、紀元前5世紀にギリシアの哲学者デモトリスに端を発する“アトモス”っていうのがアトム(原子=「不可分な」の意)です」 零和さんが頷き「その通り」と言った。 「よく知ってるね源さん、続けて」 「のちにラサフォードによる原子構造の解析と、モーリーズによる原子番号のもつ物理的意義の解明があり、これにより原子は原子核と核外電子から成ることが確かめられたんですよ」 「源さん、素晴らしい」 「素晴らしくなんかない!!!」 オイラの怒鳴り声に栄治さんは不思議目そうに目をギョッと見開いた。
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