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眠らない町
ありきたりだけれどそんな言葉が似合う町
ここに流れ着いて何となく始めた事も軌道に乗り
成功者、と言われる部類に入ったがつまらない毎日
煙草をふかしながらキラキラと星ではない光の瞬く空を仰ぐ毎日
「あー、何してるんだろう俺。」
「あ!こんな所に居たんですかオーナー、さっさと仕事片付けちゃって下さい。」
「…適当にやっちゃっといてよ甲斐君。」
甲斐「オーナーの時雨さんがしなきゃならない仕事ですんで。っていうか僕も仕事ありますし。」
時雨「えぇ~、めんどくさいなぁ。」
甲斐「…じゃ、伝えたんで。こんな路地裏でコソコソ煙草吸ってないで事務所に戻ってくださいよ。」
そう告げると青年は足早に店舗の中に入っていった。
時雨「はぁぁ…なんだかなぁ。なんかこう、面白いことないもんかね。」
……ガタンッ
時雨「んあ?」
視線を物音のする方に向けると白いワンピースの女の子がうつ向いて立っていた。
白いのはワンピースだけでなく、髪、肌、この世のものとは思えない白さに背筋が凍った。
時雨「えーと…君は…」
少女「……やっと…見つけた。」
顔をあげ、そう呟いた彼女の目の色は息を飲むほど綺麗な深紅だった。
姿、発した言葉、それらは“不気味”であり
警戒せよと脳の伝達が一気に巡る
しかし、それと同時に何故かそれを掻き消す程の
「引き寄せられるような感覚」に陥った。
寒い冬の夜、こうして僕らは出会った。
これが偶然なのならば、神様はなんて適当な奴なんだ。
退屈な日々はこの日を境に訪れなくなった。
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