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さすがに、もう帰ったよな…。
自分の家に帰ってきたのに、何故か後ろめたい気持ちになって、玄関に置いてある靴を確認してしまう。
…はっ。何でだよ。
俺がコソコソする意味わかんねー。
そう思い直して、自室へ向かった。
ドアを開けると、誰もいない。
またしてもホっとしてしまう自分がいる。
…なんか調子狂ってるよな…。
今まで抱いたことのない感情に支配されて、俺が俺じゃないみたいだ。
何なんだよ…。これ。
すると、ドアが静かに開き、しゅんが入ってきた。
「夏樹。さっきはごめん…。
俺、取り乱しちゃってさ…。
アイツ…」
「べ、別に気にしてねーし。
てか、今気持ちよく寝てたんだから話しかけんなよ。」
正直、しゅんが謝ってきたのには驚いた。
いつもだったら、しつこく怒り続けてきて、俺もキレて大喧嘩…ってのが、お決まりのパターンなのに。
今日は、そうして欲しかったのに…。
何で謝るんだよ。
それに…
しゅんの口からあの人の話を聞くのは何となく堪えられなくて…。
咄嗟にしゅんの言葉を遮った。
「…そっか。ごめん。」
しゅんはそれ以上何も言わなかった。
…結局、この夏の間、俺があの人に会うことはなかった。
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