79人が本棚に入れています
本棚に追加
しゅんと俺は同じ部屋を使っている。
去年は受験生だったから個室を与えられたけど、今年は冬海が中学受験とやらをするらしく、しぶしぶ大部屋行き。
しゅんと一緒なんていつもはかなりうざいんだけど…。
「ただいま…。」
なるべく普通にドアを開けた。
「わっっ!」
いつも声のデカイしゅんが一層大声を出して、振り向いた。
「な、な、なんだよ。
バイト、もう終わったのかよ?」
「わりーかよ。
…
…ってか、その人、大丈夫なの?」
しゅんの向こう側に見えたその人は、胸を押さえて俯いていた。
よく見ると、透き通るような白い肌をしていて、胸を押さえている手はすごく華奢だった。
「…え?
あ、ゆ、ユキ!
大丈夫か?
落ち着け。な?」
いつもは何があっても動じないしゅんが尋常じゃなく焦っている。
「ごめん、びっくりしたよな。
退院したばっかなのに…。
ほんと、ごめん!」
何が起きているのかさっぱりわからず、俺はその光景を不思議な気持ちで見ていた。
しゅんて…
こんなヤツだったっけ…?
「おいっ
お前が突然帰ってくるからだろ!
こいつが落ち着くまで、お前外出てろよ!」
「なんでっ…」
とんだとばっちりじゃねーか!
「ふざけんなっ。
さっさと出てけよ!」
「…ごめん…なさい…」
苦しげな表情で顔をあげたその人を見たら、俺は何も言えなくなってしまった。
綺麗すぎて…。
儚すぎて…。
「…わかったよ…。」
俺は力なく返事をして部屋を出た。
最初のコメントを投稿しよう!