~Fitima Ein Crime-1~

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酷い雨の日だった。 どこまで走り続けたのか覚えていない。 ただ、ひたすら足を動かした。 「…ハァ…ハァ…」 暗い森の中を、小さな布きれ一枚で駆けていく。 踏みしめる土が、容赦なく足を傷つけ、血を流して痕をつける。 その姿は、どう見ても普通の人が森の中を散策しているだけのようには見えなかった。 走る体には尾が付いていた。 人間の姿をした少年。 「アルケミー・ウェポン」 錬金術より生み出された、動物の擬人化。 元々は闇種族の人口拡大のために編み出された。 ペットとしてではなく、一人の家族として。 人間が持たない動物の持つ本能と高い戦闘能力を誇ることから、度重なる戦争と、ストレスにより、間もなく虐待や捨て駒…サクリファイスが始まった。 神官が変わり、その制約は改正された。 アルケミーの製造は監視され、中止となった。 しかし、その術は歴史を刻み、消えることはなかった。 今でも闇市場を通じて出回ることもある。 神官はアルケミーを保護するためにいくつかの養成施設を建設した。 だが、養成施設の中には、度重なる虐待を繰り返し、死に追いやる施設も少なくはなかった。 彼もその一人。 彼の後ろを、複数の影が追っていた。 「逃がすな!あいつはアルケミーでも貴重なバードタイプだ!」 「生かしておけば、数百…いや数千の価値がある!」 少年は息切れが起きていても逃げていた。 身体にあるのは無数の傷と痣。 少年は仲間とともに脱走を計画。 見事に施設から出ることはできたが、すぐに見つかる。 脱走した物には二度と同じことを起こさぬよう、重い刑罰が待っている。 抵抗し、途中で死んでいった仲間を何人も見た。 少年は生きるために数人を犠牲にした。 生ぬるい屍の上を、必死で走っていた。
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