~Fitima Ein Crime-1~

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だが、予想以上の寒さ。 雨で体が冷えていくのに、傷だけは熱を持って、火傷したように痛み続ける。 そのうち足が縺れて、転ぶ。 「…あ…」 気が付くと、足の肉が剥き出しになっていた。 血も大量に出て、もう一度立とうとしても動けなかった。 「…生きないと…俺は……もう自由に…」 少年は手を使って這うようにしたが、それも上手くいかない。 足音が増えてくる。 近づいてくる死の恐怖。 気が狂いそうだった。 「見つけたぞ!」 少年が気が付くころには、施設の職員が頭を掴んでいた。 「あぐぅ!」 「この野郎…抜け出したらどうなるか…」 それを聞いた瞬間、力を振り絞り腕を振った。 ちょうど奴の顔に当たると、急に視界が真っ暗になった。 何が起きたのか理解できなかった。 目を開けると、目の前に大量の血が流れていた。 顔面に激痛が走る。 「ぅぁ…ぅう…」 叫ぶ力もない。 「大人しくしてろ。少なくとも、お前は生きて帰してやるから。」 後から合流した連中も、少年を囲んだ。 「…ぅ。」 少年は地面に手を伸ばす。 そうすると、腹に蹴りが飛んだ。 口から大量の唾液が零れる。 「さて、連れて行くぞ。」 もう少しも動けなかった。 ようやく掴んだ自由を目の前に、意識が途切れそうになる。 このまま死んだ方が楽だと思った。 薄ら上を見上げると、急に大量の血が飛び散る。 「な、なんだ!?」 施設の連中が声を上げる。 「し、しまった!おい、逃げ…」 全員が逃げ出そうとする頃には、金色の矢が胸や頭を突き刺していた。 少年の体は地面に落ちる。 「ここは光種族の領土。いくら闇商売の奴らだと言えど、踏み入ることは許さない。」 声が聞こえる。 眼球をゆっくり動かすと、フードを被った長い髪の人物と、その後ろに4人ほど… 少年の髪の毛を持つ。 「…しに……たくなィ…」 そう呟くと、意識が飛んだ。
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