~Fitima Ein Crime-1~

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数時間後、少年は目を開けた。 「…。」 自分の手を見ると、しっかりと動いている。 生きていた。 「!?」 少年は起きようとしたが力が上手く入らない。 「うぅ…」 ふと、鼻にいい香りが当たる。 「!」 目の前のテーブルに、温かい食事が用意されていた。 最初は慎重に近づき、パンへ手を伸ばす。 恐る恐る人かじりしてみたが、普通だ。毒はない。 少年は食事に被りつく。マナーなどない。ただ、死にそうなくらいの空腹を満たしたかった。 見事にすべて平らげ、満足そうにした。 「あー!食べた食べた!」 久しぶりにこれほどの量を食べた。 「気に入ったか?」 急に声を掛けられ、慌てて振り向く。 「…そんなに驚くな。」 先ほどのフードの男がそこにいた。 「……お、お前は…」 「警戒するな。俺は別にお前を殺したいわけじゃない。」 男はフードを脱ぐ。 緑色の長い髪で、後ろを縛っている。 赤い目…身長は180ぐらいはあるだろうか… 男が近づくと、少年は後ずさった。 「動くな。」 「!」 少年は固まったように動かなくなった。 男はすぐ目の前に来る。 「あ…」 少年は男に恐怖した。 叩かれるのか、それとも切り傷をつけられるのか。 「…バスローブ…乱れてる。」 「え?」 男は紐を撮り、少年の格好を直す。 「さっきから、裸が見えて仕方ない。」 「え?あっ…」 久しぶりに感じた人の体温。 少年は戸惑っていた。 「…やっぱり、近くで見るとよく似てる。」 「え?」 「……自己紹介が遅れたな。」 男は離れる。 「俺の名前はフィティマ・エイン・クライム。ここは光の国…神殿内部だ。」
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