~Fitima Ein Crime-1~

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気が付くと、フィティマの胸の中にいた。 思わず、その体を手で押して突き放す。 顔を見合わせると、フィティマの眼が見えた。 赤く、透き通るような優しい瞳。 先ほどのような狂気に満ちたあの男と違い、吸い込まれそうになった。 「光栄に思え。」 「え?」 フィティマは少年から離れた。 「ところで、お前の名前を聞いてなかった。アルケミーと呼ぶのも気が引ける。」 「俺?俺は…えっと…ナンバー…」 「ん?施設ではそんな家畜のような名前を付けられるのか?」 「これ、名前じゃないのか?」 フィティマは少年を見て考え込む。 「…エルム。」 「え?」 フィティマは少年の腕を掴み、そこに刻まれている元の名前の焼き印に手をかざす。 「お前は今日から『エルム』。神官直通者序列第1位、フィティマ・エイン・クライムの名において、新しき名を刻むことを許そう。」 エルムの腕から焼印が消えた。 「これ…洗ったって取れなかったのに…」 「容易いものだ。この程度を【破壊】するぐらいな。」 フィティマは立ち上がり部屋の目の前にあるバルコニーへ行くためのガラス戸を開く。 「な、に…?」 「安心しろ。俺は別に、お前を叩いたりはしない。」 フィティマは先に出ていく。 エルムはその後を付いて行った。 「残念だな。雨でなければ、もっと良い景色だったんだが。」 フィティマは傘を片手に、エルムを手招きする。 エルムはフィティマの横に来て、その景色を見た。 そこは煌びやかな明かりが、街いっぱい広がっていた。 雨に濡れて、輝きが余計に増して… 「すげぇ!なんだよこれ!?これが…街なのか!?」 「光の国だ。戦火が落ち着いた時には、こうして人口太陽を消し、光の技術を楽しむ。」 「あの向こうに、色々売ってるって聞いたことがあるぞ!」 「行ってみたいか?」 「うん!これが外なんだ…俺が夢に見た……自由な世界。」 エルムの目は輝いていた。 その姿にフィティマは笑う。
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