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この肌寒くなってきた季節に薄着の女の子が座り込んでいるだけでも充分異質なのだが 俺はそれより別の事に違和感を感じた
まず第一に この女の子だが 俺は見覚えがあった
しかし 彼女は知り合いではなく 俺が一方的に知っている相手であった
ならば 有名人かと 聞かれそうだが ここでもうひとつの疑問点が出てくる
確かに彼女は有名人に近い存在だが どうしても不可解な事がある
それはこの場所だ
彼女が座り込んでいたこの場所は 過疎化が進んでいるこの街でも わりと人目につきやすい 商店街に近い位置である
俺が商店街に来た時間帯は商店街自体の営業時間ギリギリだったが それでもまだ何人か人は居た
彼女が人目に付かなかったとは考えにくい
もっとも 彼女がどれだけの時間ここに居たかにもよるが 少なくとも俺が商店街に入った30分前にはこの場所に彼女は居なかった
居たら間違いなく気づく位置だったのだ
加えて俺が商店街に入った後も商店街の出入口はもう片方が工事中の為入れなくなっているので 実質的に出入口は俺が入った方の一つしかない
商店街に入った後も何人か帰っていったこの街の住人は居た為 全員が気付かなかったなんて 考えられないのだ
ましてやこの街の住人達は例え見知らぬ人であろうが助け合いの精神を忘れない優しい人たちなのだ
無視なんてあり得ない
つまり 彼女は俺以外に見えてないようなのだ 現に何台か今も車が通過していくが 誰も止まろうとはしない
そしてなにより…彼女は…本来現実に存在し得ない人物なのだ
何故ならば彼女はコスプレのような甘いものではなく どこからどう見ても
「…ん…」
「…初音ミク…だよな…?」
「…え…?」
俺が思わず声を出すと 彼女は目を覚まし こちらを見つめてきた
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