140人が本棚に入れています
本棚に追加
「誠、危ないからあんまり近くに寄るなよ?」
「分かってるって!」
美琴はフゥっと息を吐き呼吸を整え、ゆっくりと弓矢を構えた。
背筋をピッと伸ばし、そのままゆっくりと矢を引く。
…すっげぇ真剣な表情……
こっちまで黙ってしまう。
パンッと音がし、矢が的めがけて飛んでいく。
トスッと音がし、矢は見事に的に突き刺さった。
「すっげぇな美琴!」
「…いや、ダメだな。」
「え、何でだよ。」
「よく見ろ。ズレてるだろ。」
よ~く目を凝らして的を見つめる。
…あ、確かに少し真ん中からズレている。
「いや、でもすげぇよ美琴。
素人の俺が見ても分かるよ。」
「…いや、これじゃダメだ。」
「あぁ?だから何でだし。
………って美琴、何か顔赤いけど大丈夫かよ。」
「………お前ってさぁ…ホント鈍いっていうか…」
「は?何がだし。」
そこで俺は気付いた。
もしかして今の美琴は
少女マンガ風に例えてみると、
『好きな彼に良いとこを見せようとしたら逆に変なプレッシャーかかって緊張しちゃって失敗しちゃった恥ずかしい☆』
…っていう状況……なのか?
「あ~…あのさぁ美琴、確かに真ん中からズレていたけど、弓道やってるお前はすごくカッコいい…ぞ?」
「………………………」
美琴を励まそうと必死に考えたんだが…
もう少しマシな事言えなかったのか俺?
美琴も何か言ってくれよっ!!
最初のコメントを投稿しよう!