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少し暗くなった帰り道を二人で歩く。
…斎藤さんと帰れば良いのに……。
「今度な、弓道部の試合があるんだ。」
「ふーん……いつ?」
「来月の第一日曜日。」
「…あ、行けるかも。」
端から見れば、仲良さそうに話しているように見えるだろう。
でも俺はモヤモヤしっぱなしだ。
「誰が出んの?」
「男子は俺と一年生が二人。
女子は斎藤が代表だ。」
…また斎藤さんかよ。
「…ずいぶん親しげだったな。斎藤さんと。」
「そりゃあ同じ部活だしな。」
「………ふーん……」
…ホントにそれだけかよ。
「…あのな誠。」
「…………何。」
「…一つ、謝らないといけない事があるんだ。」
「…え?」
…何だ…?
もしかして、あの告白は嘘でしたーってオチとかか?
「…実は今日、弓道部が休みなのは知ってたんだ。」
「………………はぁ?」
え……じゃあ何?
俺の事誘ったのはわざとってこと?
…確かに今考えてみれば…しっかり者の美琴が自分の部活の休みを忘れるはずがない。
「ごめんな、ただでさえ気まずいのにこんな事しちゃって。」
「……何で嘘なんか……」
美琴が静かにこっちを向く。
「…お前と二人きりになりたかった……って言ったら怒る?」
「なっ………」
…ホントにこいつは………っ
「…でも、これで分かっただろ?
俺がお前のことどれだけ本気か。」
そう一言だけ言って、美琴は俺の一歩前を歩き始めた。
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