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そして、次は美琴の番。
フゥっと一息つき、美琴が弓矢を構える。
この距離からでも分かる、美琴のあの真剣な表情。
観客も一気に静かになる。
俺もジッと美琴を見詰める。
パンッと鋭い音がし、美琴の矢が飛んでいく。
他の選手と比べて、スピードもパワーも違うのが分かる。
矢は寸分の狂いもなく、見事に真ん中に命中した。
これには観客も歓声を上げた。
拍手が鳴り響く。
(美琴すげぇ…!あんなに練習頑張ってたもんな…!)
俺も美琴へ拍手を送った。
『以上で、男子の部を終わります。
選手は退場してください。
続いて、女子の部に移ります。』
アナウンスが流れると、選手達が退場し始めた。
その時、美琴がこっちを見た。
今度は美琴から手を振ってきた。
(はは…良い笑顔しやがって…)
俺も手を振り返した。
美琴…とりあえず、お疲れさん。
口で伝えられないのは残念だけど、帰りに言ってやろう。
選手が全員退場したあと、今度は女子が入場し始めた。
おー、なんか華があるっつーか、なんつーか…。
すると、美琴と同様に、斎藤さんが最後に出てきた。
(………ん?)
何か斎藤さん…妙にフラついているような気が……?
そう思った瞬間、斎藤さんの体が大きく傾き、そのまま倒れてしまった。
(え?え?だ、大丈夫なのか?)
会場が一気にざわつき始める。
(………!……美琴……)
倒れた斎藤さんに真っ先に駆けつけたのは、美琴だった。
声は聞こえないが、何か必死に話しかけているようだ。
(……………!)
すると、美琴は斎藤さんを抱きかかえ、そのまま退場していった。
(…お姫様だっこ……ってやつ?)
俺は斎藤さんの事も心配だったが、
自分の見えない所で二人がどうしてるのかが何故かすごく気になった。
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