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「…………は……?」
試す………何を………?
考える暇もなく、美琴の顔がだんだんと近付いてくる。
「お……い……美琴………!?」
俺の声なんて耳に入っていないのか、お構いなしに顔を近付けてくる。
……や…………やだ……。
俺は思わず固く目を閉じた。
しかし、何もされないまま、美琴は俺の顎から手をどけた。
「…そんなに嫌だったの?」
「……っ……………。」
知らない間に、俺の目から涙がこぼれていた。
だって……こんなの美琴じゃない……。
「……ごめん誠、俺もう行く。」
美琴が歩き始めた。
「まっ……美琴………!」
「来ないで。」
今までで一番冷たい声だった。
美琴は静かに振り返り、俺に言った。
「…告白なんかして、本当にごめん。
迷惑だったよな。困ったよな。
もう、良いから。
誠のこと好きなの、やめるから。
だから、しばらく近寄らないで。」
そのまま
美琴がもう一度振り返ってくれることは無かった。
1人残された俺は、まだ頭がついていかず、ボーッとしていた。
その時、ポツッと雨が降ってきた。
ああ…帰らないと。
1人で。
折りたたみ持ってないから
濡れて帰らないと。
今日は傘に入れてくれるアイツもいないし。
きっとアイツの傘には
斎藤さんが入るんだろうな。
今日のアイツの隣には
斎藤さんが立つんだな。
あれ?おかしいな。
何か視界が曇ってきた。
何でだろう、目の前が歪む。
頬を温かい何かが伝う。
あれ……?
俺…ガチで泣いてんの?
何で?
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