賢者様買い物に行く!!

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「………金がねぇな。 仕方ねぇどっかの犯罪組織に戦闘用の合成獣でも売るか。」 金庫を見て、そう独白するノアの影が揺らぎそして丸く広がる。 その中からは数体の異形の生物が這い出てくる。 「御止め下さい。」 しかしそこで制止の声がかかる。 「あン? 誰だてめぇ。」 「鴉にございます。今回は御身の護衛ならびに監視に参りました。」 鍛え上げられた肉体を持つ壮年の男性がノアの後ろに現れる。 「てめぇも鴉か。」 「ええ、そうにございます。」 「で、だ。何の用だ。」 「貴方様の監視を。我等には貴方様が行き過ぎた行動を取られた場合の処刑権を与えられております故。」 「勝手な行動をとるなら殺すってことか。」 「そうとられても構いません。」 その言葉と共にノアの周りを数人の黒装束の男女が武器を構えて取り囲む。 「てめぇらは俺に勝てると思ってンのか?。」 対するノアも影がざわめき一気に飛び出した数体の異形がノアを守るように構える。 「此方は全て鴉の嘴でも精鋭の部隊です。かなりの戦闘力を有しております。」 「へぇ。そりゃぁまた。」 一目に強固とわかる鋼の鱗を持つ大蛇の異形がノアに巻き付き鴉達を威嚇する。 不意に一歩動いた鴉の一人の足下に何かが高速で飛来し突き刺さる。 それは鋼の針で、それを打ち出したのは異形の内の一匹、全身を鋼の針で覆われた蜥蜴。 「……そのような物、報告書にございませんが。」 「クヒャヒャヒャヒャッ……スゲェだろ。俺の自慢の一つ、鋼竜シリーズだ。」 バシバシと大蛇を叩きながらノアは口の端を三日月のように吊り上げて笑う。 よく見ればノアを守る異形は全て鋼で全身を覆われた爬虫類ばかり。 「自慢の一つということは、まだ他にもお持ちになられているのですか。」 「さぁどうだろうなぁ。いるかも知れないしいないかも知れない。いやぁ俺にはわかんないね。何せ造った数が多すぎてどれがどれだかわかんねぇから。」 壮年の鴉の問いに対してノアは、ケラケラ笑いながらわざとらしく宣う。 そのふざけた態度に鴉は俄に殺気立つ。
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