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「ところで、だ。」
「……はい。」
急に真剣な表情になるノアに警戒を強める鴉。
「金寄越せ。」
「既に研究資金と給料は十分に払われているはずですが。」
「実験用の素材はてめえら役人共が思ってる以上に金かかんだよ。例えばさっきの鋼竜シリーズの鋼蛇竜はよぉ、幾らかかってっと思う。」
「金貨200……いや、500枚程でしょうか。」
この国では、銅貨、鉄貨、銀貨、金貨が存在し、銅貨10枚で鉄貨1枚、鉄貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚となっており、一般市民の平均的な年収は、金貨4枚程なので500枚とはかなりの額となる。
「ケッ、そんなちんけな金であんな素材集められるかよ。
まず鋼蛇竜の素体の蛇竜、こいつぁ魔物じゃねえが、その希少性と手強さ故に……買ったら金貨500は下らねぇ。」
「はい、相場はそれくらいですね。しかしあれは買っていないのでは? 部下が貴方が蛇竜を五体ほど乱獲していたのを目撃しておりますが」
「クッ!!…だ、だがあの鋼蛇竜の鱗、あれは魔法銀(ミスリル)コーティングしてあんだよ! 魔法銀で全身コーティングすんのは金がかかんだよ。」
「そういえば、最近商人や貴族の屋敷で所有する魔法銀製の鎧や武器などが相次いで盗難に遭っているのですが……何か御存知ないでしょうか?」
「知らねぇな。俺ァ聖人の如く善意に満ちた人間だかんなぁ。盗難なんて知らねぇよ。」
口を三日月のように吊り上げて笑うノアに、鴉は、犯人を半ば確信する。
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