幕開け

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ーーー火花が散った。 時は戦乱。この国が最も荒んでいた時代。 刃と刃がぶつかり合い、血が血で洗われ、命が命によって殺された時代。 その中でも、特に争いが激しかった時。 《山の国》と《谷の国》の国境付近にある、首吊り峠も、激戦地の一つとなっていた。 枯れ木が生い茂る寂れたこの峠で、かつて山賊一味全員が首吊り処刑にかけられた事が名の由来である。 百年以上が経った現在でも、当時使われていたのであろう縄が、彼方此方の木枝からぶら下がっている。 その首吊り峠は今、刃と刃がぶつかり合い、ひしめき合う戦の真っ只中にあった。 ーーーーーー 戦慄と、断末魔が奏でる惨たらしい声が、どこまでも、いつまでも続いていた。 辺り一面に死体が転がり、投げ出された四肢を踏みつけながら生者が戦っている。 血の海に沈む仲間の体を足蹴にしながら、それでも、未だ生ある者は足掻いていた。 ただただ目の前の敵を。 ただただ目に写った対象を。 ただただ生きる為に、斬り殺していた。 半世紀以上の因縁がある《山の国》、《谷の国》の両国の軍が、総力を上げて激突したが故にか。 もはやこの峠に死体の無い場所が存在しない程の、大乱戦となっている。
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