第1章 (2)ある日の面接

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ルイはますますニヤニヤしながら、隣に座っている私の肩に腕を回し、ギュッと抱きすくめてきた。 『リコって、フレッシュフルーツみたいだよねえ。 若くてみずみずしくて、ピュアで。 すっごくかわいい。食べちゃいたい』 そこまで言ったのを聞いて、アキラはバン、と立ち上がった。 「帰ろ。この話はナシね」 私にちょっかいを出してからかったルイに気分を害したアキラを、マリーがなだめた。 『冗談だよ、アキラ。リコが大切なんだね。 あたしがいいこと教えてあげる。 あそこにいるのが、ルイの好きな人だよ』 彼女はカフェの店員さんを指した。 カウンターの向こうでエプロンをして、エスプレッソマシンに向かっている男の人。 細身でブラウンのよく整えられた髪がさっぱりしている。 『ええ?そうなの?』 『そうだよ!まだ片思いだけどね』 彼もゲイなのかな。 憶測から始まり、もし好きになったら本人に確認しないといけないんだろうな。 そう考えると、彼の片思いって普通の男女より困難が多そう。
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